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10-02-28 日曜日のくつろぎ篇 出る絵、退く絵

絵には二通りある。
藤田嗣治の「アッツ島玉砕」とか、香月泰男のシベリアシリーズの何枚かは出る絵である。
絵の前に立つと、絵が孕んでいる気魄がドーンと飛び出してきて見る人の心を揺さぶる。
逆に絵が奥に引っ込んで見える絵がある。たとえば岡野浩二画伯の抽象画はそれである。

心が向こうの世界に吸い込まれるような感じがする絵である。これは怖い。
どっちの絵がいいのかというと、いうまでもない。どっちも面白いのである。
もう一つの絵がある。画面の平面上で収まっている立体感のない絵である。平面の絵である。
お酒でいえば、うまくもないが、まずくもない、どうでもいい酒である。

うまい酒とかまずい酒というのは、どうでもいい酒に対して味のあるお酒だということである。
絵も同様に味のある絵には立体感がある。その絵が持っている気合のことである。
出る絵というのは、絵が見る人に向かって飛び込んでくるのではない。
見る人の心が吸いよせられるから近くに寄ってきたように見えるのである。

心が引き込まれてしまう絵なのである。それはその世界にひたりたくなる絵なのである。
一方退く絵というのは、見る人の心の位置が絵から離れるものをいう。
いずれも絵の位置は変わらないのに見る人の立ち位置が動くのである。
そのように人の心が立体的に動くことを味があるというのである。
by munojiya | 2010-02-28 00:27 | 酩酊篇 | Trackback | Comments(0)

うまいお酒があります その楽しみを語ります


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