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2010-06-14 余外篇 「告白」殺意あり

『殺意はあったけれど直接手を下したわけではないA。
殺意はなかったけれど直接手を下すことになったB。』(湊かなえ「告白」から)
結果的に一人の少女が殺された。少年Aと少年Bはどちらが悪いのか。
殺人を企図したが実行できなかったAか。殺意はないのに殺人をなしてしまったBか。

非業な「結果」はあっても、それに関与したAもBもいずれも無罪だという。
少年法がそれを保証しているのだという。
少年法というのはそれほどまでに子供を馬鹿にしている法律だということである。
子供の人権を無視しているのである。子供にはまともな判断力がないというのである。

ガキにわが子を殺された親は悲劇である。他人の子なら同情ですむのであるが。
芸が身を助ける身の不幸というが、被害者になるのも身の不幸としかいいようがない。
そういう境遇に遭うこと自体を不幸というのである。出合う不幸である。
出合わない不幸というのもある。うまいお酒に出合えない不幸である。

毒性という殺意はあるが、直接手を下すことがないA。
死ぬ気(殺意)はないのに自らAを口にして、すなわち直接手を下すことになったB。
それによって体を壊して人一人が“殺される”という結果が生じることがある。
非業な結果が少女ではなく、大概は年寄りなのでだれも同情してくれないのである。

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『殺意とは一定の距離が必要な人間が、その境界線を踏み越えてきたときに
生じるものなのだと、初めて気付いた。』(文庫版「告白」256頁)
実体験のある人が書いている言葉だけに味わいがあるのである。実体験に基づいているのに
庵主がうまいというお酒の味わいが伝わらないとしたら庵主に筆力がないせいである。

by munojiya | 2010-06-14 00:09 | 余外篇 | Trackback | Comments(0)

うまいお酒があります その楽しみを語ります


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