2011-12-03 お酒のうまさは酸味にある
アルコールに由来するといえばそれで終わりであるが、
香水は、アルコールに由来しても、そのアルコールが香水でないように、
お酒も、アルコールに由来するが、そのアルコールもお酒ではないのである。
お酒がアルコールなら、庵主はお酒を呑まない。いや、呑めない。まずいからである。
しかも、連続多量飲用は多分体にもよくないことだろうと思われる。
そうなったら依存症の域だろう。それはお酒ではなくアルコールを飲んでいるからである。
庵主が呑めるのはお酒である。庵主にとってお酒は嗜〈たしな〉むものなのである。
アルコールに乗っている「うまい」と感じる味わいを楽しみたいのである。
したがって、庵主にとってまずい酒はお酒ではないのである。用をなさないからである。
では、そのうまさの正体は何なのか。
一つは甘さである。舌に感じる甘さではなく、心に感じる甘さである。
その甘さを担保するのが酸味である。
甘さの輪郭を整えるのが酸味の役割である。隠し味といってもいい味であるが、
日本酒に限らず酒はそれがしっかりしていないとうまくもなんともないのである。
まずい酒は酸味を加えて誤魔化して呑むという荒技ができるのも酸味ゆえである。
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料理の隠し味が、隠し味になっていないものは馬鹿にされる。お酒の酸味もまた同様である。