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ご流儀

そのお店のやり方を庵主はご流儀という。
吟醸酒には燗をつけないというお店もある。
庵主が呑みたい吟醸酒のぬる燗を頼んだら
断ってくるようなやり方をである。

酒(しょうちゅう)を水やお湯で割って呑むのを拒絶しないお店が
日本酒に燗をつけるのを拒むというのでは一貫性がないではないか。
やくざ映画全盛の頃なら
庵主は「てめぇそれでも日本(にっぽん)人か」と心の内で啖呵をきっていたことだろう。

そういうときは
庵主はおだやかにお店と相談するのである。
お店のご流儀には反するかもしれませんが
丼にお湯をはって持ってきてくれませんかと。

お冷やと称する水は只で出てくるのだから
それがお湯になったところでサービスの範囲だろう。
持ってきてもらった湯の中に
庵主は徳利を付けて温めるのである。

別のお店でのご流儀である。
「開運」の祝酒を呑みたかった。
純米酒である。
一番小さいグラスでくださいと所望する。

あいにく
うちでは一合でお願いしていますときた。
庵主は酒では喧嘩はしない。
ああそれでいいですよと受け流す。

ただしお酒の量は半分でとどめてもらう。
それ以上呑めないからである。
そしてそれだけはどうしても呑みたいからである。
呑めない量を貰って酒を残すのは食い放題の店で食い残すのと同じでみっともない。

とある店では
ちゃんと店内に貼ってある。
呑めない方は最初から半分の量でご注文ください。
お酒を残すと杜氏に失礼ですから、と。

何がなんでも一合主義のそのお店は
いいお酒を揃えているのである。
だから庵主は立ち寄るのである。
そういういいお酒なのに呑み残すことがわかっていて一合で出すというのである。

客が呑み残したお酒は
捨てるしかないだろう。
それはもったいない。
だから庵主は最初から半分の量しかもらわないのである。

そのお店で水を頼むと「淀橋正宗」が出てくる。
東京都の水道水のことである。
さすがにそのお店のお酒の酒質に
それなりにいい水なのであるが水道水のちょっと癖のある味はそぐわない。

せっかく味わっていた美酒の甘美な境地が
その水を口にしたら一遍に現実に引き戻されてしまう。
そういうアンバランスなことを平気でやるお店なのである。
それでいてお酒の選択眼は優れているから困るのだ。

次回からは
やわらぎ水は持ち込みでいかにゃならない。
コップに氷だけもらってそれに持参した水をいれて飲むことにする。
それは庵主の流儀なのである、つべこべいわせない。
by munojiya | 2005-08-22 00:05 | Trackback | Comments(0)

うまいお酒があります その楽しみを語ります


by munojiya