2012-10-24 「半蔵/特別純米」
そのカップ酒を飲んでみる。精米歩合60%で山廃仕込の特別純米酒である。
カップ酒のいいところは、そのお酒を1合で買えることである。
悪いところは、あまりいい格式〈ランク〉のお酒は入っていないことが多いということである。
しかし、それ故〈ゆえ〉に、その蔵の「実力」を知るのに最適な酒なのである。
お酒を知る人によると、カップ酒は瓶と比べてその口が大きいので酒の劣化が早いという。
劣化と書いたが、未開封でも風味が落ちていくのが瓶よりは早いということである。
それを劣化と呼ぶのはなんなので別の言葉を考えることにしよう。栓の密封度が低い、とか。
その悪条件を克服して呑めるお酒が造れる蔵なら、その上の格式のお酒は呑むまでもない。
カップ酒で必要にして十分な味わいが楽しめるなら、それ以上の物を求めることはない。
それより上級のうまいお酒がその蔵にあるということが分かっていればいいことである。
楽しみの部分を残しておかないと生きている楽しみがなくなるからである。
頂点に立つということは、実は最大の寂しさなのだという話を聞いたことがある。
一流とは、実は悲しいことなのである。庵主のような三流人は案外幸せなのかもしれない。
「半蔵/特別純米」(一合300円)は値段もそれなりだけに味はしっかりしている。
しかし、そこにいま一つ魅力が見いだせないのである。欠けているのはなんなのだろうか。
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うまいお酒には華〈はな〉があるということである。
「開運〈かいうん〉」とか、「十四代〈じゅうよんだい〉」とかを呑む時に味わえる
ワクワク感の正体は何なのだろうか。呑み手の、すなわち庵主の方にその原因があるのか。
それともお酒の方にその秘密があるのか、それはこれから考察することである。
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『清酒カップ 特別純米酒 育てモト[モトは酉+元] 山廃仕込 「半蔵」
契約栽培米・五百万石100%
アルコール分 15度以上16度未満 原材料名 米(国産)、米こうじ(国産米)
精米歩合60% 180ML詰 製造年月 12.6.』