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2012-11-19 鉄板「相模灘」

鉄板とは、お酒においては、期待通りにうまいお酒という意味である。
いや、期待を裏切られることがないお酒ということである。
まずい酒ではないことがわかっているお酒のことである。
そして、鉄板は、期待するところ以上にうまいお酒であっても困るのである。

キャッチャーが期待するストライクが鉄板である。
期待する以上の剛球や、切れのいい球が来たらかえって困ってしまうのと同じである。
球を受け損ねてしまうことになりかねない。落球ならまだしもパスボールになったら。
投手〈つくりて〉と捕手〈のみて〉の阿吽の呼吸がぴったり合うことが鉄板である。

横浜の居酒屋。地酒を揃えているお店だった。神奈川のお酒を知っている人は少ないだろう。
地元の人がその酒銘を知らないほどなのだから。その神奈川のお酒が酒祭りに並んでいた。
「天青/風路」(本醸造)、「相模灘」(特別純米)、「昇龍蓬莱」(特別純米)、
「いづみ橋/情熱」(純米)、「丹沢山」(吟醸)、「隆」(純米吟醸)の6本である。

目は「隆」にいったが、庵主の鉄板である「相模灘」を呑むことにした。(脚注)
ここは苦衷の決断である。「相模灘」がうまいことはわかっているから呑むまでもないのだが、
どれも気になるお酒の中から、つい「相模灘」を選んでしまうのである。
それが「うまい」という呪いなのである。呑むまでもなかった。やっぱりうまかったのである。

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(脚注)
「隆〈りゅう〉」と「相模灘〈さがみなだ〉」を並べられて、どっちにするかと言われたら、
呑むなら「隆」である。しかし、好きなのは「相模灘」である。好きな方を取ったのである。
そういう時は両方呑むのが正解だが、正一合あふれ升では庵主の酒量がそれを許さなかった。

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パスボールとワイルドピッチの違いはどこにあるかという話題〈ネタ〉がある。
純米酒とアル添酒の違いはどこにあるかという酒の肴〈ネタ〉もそれである。
パスボールとワイルドピッチの違いも規定はあるが、最後は公式記録員が決めるという。
お酒も、純米酒とアル添酒の違いを決めるのは呑み手の感性であることと同じなのである。

by munojiya | 2012-11-19 06:44 | 酩酊篇 | Trackback | Comments(0)

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