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2012-11-20 軽快

昔はスポーツカーは憧れの車だったが、今は逆にそんなものに乗っていると笑われるという。
世の中の事情が変わってしまったからである。進歩したからである。
進歩したために、過去のイメージが旧くなってしまったのである。
昔はスポーツカーでなければ実現しなかった夢が、今では他で容易に味わえるようになった。

昔はスポーツカーじゃないと軽快に走れない
ワンボックスじゃないと荷物乗せられない
セダンじゃないと長距離を乗ってられないとか
車種によって用途が限られてたからな

今は軽自動車でも上のグレードならターボもついてるから
それなりに軽快に走れて荷物も積めて長距離も乗れない事もない
』(典拠145番)。
お酒もそれである。昔は、吟醸酒でなければうまいお酒がなかったのである。
米の酒なのにフルーティーな香りの吟醸香〈ぎんじょうか〉はそれでないと味わえなかった。

今では、香りの出る酵母がいくつも開発されて、容易に吟醸香を造れるようになった。
むしろ吟醸香はうるさく感じるようになったのである。それを感じさせないのが技になった。
憧れの吟醸香〈ぎんじょうこう、とも読む〉が、ちっとも憧れでなくなってしまった。
進歩とは、劣化であるという謂いである。劣化とは夢がなくなることをいうのである。

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人は、夢がなければ生きていけないのに、それを進歩によって削ぎ落としているのである。
美人が、美人でなくなったときの虚しさを味わっているのである。
美人は数少ないからいいのに、韓流美人のようにみんな似通った美人になってしまったら、
ちっとも楽しくないことに気付いたのである。あふれる美人はただうるさいだけなのである。

万叢緑中紅一点。一面の緑の叢〈くさむら〉の中に赤い花が一つだけあるから目立つのである。
一面の赤の中に一点の朱〈しゅ〉があっても、それは何の感動も与えないということである。
どれもがうまいお酒のなかに美酒が一点あってもそれは同じなのである。
人は、メリハリがないと感動しないのである。つまらなくなるのである。

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俺もBMWのM5ってのが欲しいとは思うけれど当然買えず
日本のオートマしかない車はもう興味すらわかない
別に走り屋じゃないしただのオッサンだけどマニュアル車が無い日本はダメだ
』(214番)。
うまいお酒とはオートマなのである。だから、その気持が、庵主にも理解はできるのである。

通勤車はプリウス。
家族で出かける車はハイエース。
ひとりで走るのはフェアレディZ。
』(233番)。
どれも他人の才を金で買う楽しみにすぎないが、お酒はそれが許されるからいいのである。

by munojiya | 2012-11-20 01:51 | 世話物 | Trackback | Comments(0)

うまいお酒があります その楽しみを語ります


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