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2013-02-19 “そういうこと”、で

「冬樹」は秋田の「福の友」が醸しているお酒である。
一星邦彦蔵元と鶴田惣太郎杜氏のコンビによって造られたお酒である。(注)
もう何年も前のことだが、庵主がそのお酒と出合った時に、こんなうまい味わいがあるのかと
一目で、いや一口でぞっこん惚れてしまったお酒である。

それから毎年、その新酒が出るのが楽しみでしょうがなかった。
毎年、まちがいなく、最初に味わったその味と出合うことができたからである。
ぶれていないという安心感を味わっていたものである。
とはいってもお酒の味自体は毎年変わっていたはずである。

それを庵主がぶれていないと思っていたのは造りの姿勢が変わっていなかったからである。
地元の米で醸すということである。その米がキヨニシキである。酒造好適米ではないのだ。
秋田の神宮寺の地酒〈おさけ〉を呑んでいたのである。
そして単一原酒(調合一切無)である。無調整である。化粧していないお酒なのである。

お酒の地の美〈おい〉しさが旨かったのである。秋田美人だったのである。可愛かった。
しかし、最初に米が厳しくなったという。キヨニシキの必要量が確保できなくなったという。
昔のラベルには「キヨニシキ」という米の名が書かれていたが、いまはその名はない。
キヨニシキで醸していた時のあの甘露〈まろやか〉な味わいがなくなってしまったのである。

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造りの姿勢が変わっていないことはよくわかるが、その意味では十分にうまいお酒であるが、
庵主はいわゆる「辛口〈空口〉」のお酒は好みじゃないということなのである。
人がいつまでも子供でないように、お酒もいつまでも子どもではないということなのだろう。
歳を経るということは“そういうこと”なのである。それを庵主は劣化といっているのだが。

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(注)当代の蔵元は一星雅彦氏である。今も鶴田杜氏が醸しているかはそのHPでは判らない。
余談だが、リンク先の鶴田惣太郎杜氏の記事は、掲載日が書かれていないのでいつの話なのか
判らないのである。当ブログが表題の最初に掲載日を掲げている理由は、ネットの記事は内容
よりもその掲載日こそが一番肝心なことであるという庵主の主張によるものである。


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by munojiya | 2013-02-19 00:03 | 酩酊篇 | Trackback | Comments(0)

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