2013-10-29 酷い言葉
その人の自尊心をくじいて、生きていく希望の灯を消してしまう言葉である。
『「俺が一両で買ったのは、そなたの身の上話だ。
その体に一両の値打ちは無い。」』(典拠)。脚本は星川清司である。
女の全否定である。天から授かった体には魅力はなくても、心の中に誇りが保てれば。
しかし、そのセリフにはさらに追い打ちがある。
『「誇りを捨てた武家育ちの女の末路。抱いて寝ればうらぶれるばかり。
こっちまで惨めになる」』(同上)。「酷い」は「ひどい」ではなく「むごい」と読む。
そして、これも酷い言葉である。
『日本人の嫌韓が進んだ結果、韓国料理店が次々と姿を消していく…… まずい・臭い・
見た目グロい・気持ち悪い・閑古鳥・女性は行かない ← 日本人に嫌われる韓国文化って
存在価値あるの?』(典拠)。と、これまた全否定である。
「造り手の誇りを捨てた手抜きの酒の末路。呑めば、かえって気分がうらぶれるばかり。
こっちまでが惨めになる」。味わうお酒でなく、量を造る酒だとそうなってしまう。
「呑み手に嫌われるお酒って、存在価値があるの?」。うまくないお酒は余興ということで。
そういうお酒には近寄らないことである。そう思うだけでも、わびしくなるからである。
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一方、庵主が気に入っている言葉は、同じ星川清司の「眠狂四郎円月斬り」の中の科白である。
狂四郎が刀を研ぎに出した時に、研ぎ上がった刃をしみじみと見つめながらその研ぎ師がいう。
「無双正宗、私にはどうにも好きになれまぜんな」。妖刀だというのだ、邪刀だというのだ。
「いかがなものか」といったら相手の全否定だが、これはこっち側だけの都合なのである。