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2015-04-18 東映時代劇映画「大殺陣」

往年の東映時代劇映画に「大殺陣」(1964)という映画がある。
たまたまNFCで上映をしていたので観ることができた。
同じ東映の「大喧嘩」(1964)は「おおでいり」と読むが、庵主は「大殺陣」を読めない。
「だいぎゃくさつ」とか「みなごしろ」とでも読むものか。「おおたて」では語呂が悪いので。

同じく東映の時代劇に傑作とされる「十三人の刺客」(1963)という映画がある。
傑作というより、名作と呼びたい映画である。
最近、2010年に三池崇史監督によってリメイクされた映画である。
リメイクの映画も悪くはないが、オリジナルの方が凄い。両者は世界が異なる映画である。

その「十三人の刺客」は、池上金男脚本、工藤栄一監督の映画である。
観終わったら、どっと疲れるが走る。見ている間の緊張感が一気に解放されるからである。
そのイケキンとクドピンの映画なのだから、しかも柳の下の二匹目の泥鰌狙い映画だから、
見る前の期待値は高いのである。その期待値とは別の意味で東映映画に圧倒されてしまった。

白黒映画なのだがその画質が目茶苦茶きれいなのである。白と黒のメリハリに立体感がある。
黒澤明の「七人の侍」も白黒映画だが、そっちの方は生ぬるい画質なのに、この「大殺陣」は
目が覚めるほどに美しい白黒画面で見せてくれるのである。そして録音が見事である。
役者の声を聞いているだけでもこの映画は観る価値がある。花粉症重症で終映語のお酒はなし。

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この映画はお酒でいえば大吟醸クラスの映画だ。色良し、香り良し、声〈おと〉良しである。
事を成す日の朝の大阪志郎のエピソードのような露悪的な話もあって、映画の濃密度は高い。
今村昌平監督の「赤い殺意」とか「ニッポン昆虫記」とかもそうだが、観終わったあと映画を
観たという満足感ともいえる疲労感に襲われるのである。観ている時に相当緊張しているのだ。

しかし、さすがに、いくらいいお酒であっても、大吟醸が二本続いたら飽きる様に、
この映画のようなどっしりと重い映画を二本続けて観ることはできなだろう。気が狂うから。
集団抗争時代劇という。最後は敵味方入り乱れての殺し合いが続く。その描写が凄いのである。
太平の世での殺し合いという設定だからドタバタなのだが、終わった後の虚脱感は絶妙である。

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参考】ネタバレになるので「あれ」としか書けない、そのエピソードについて。
テロリストの決行前の日常が描かれますが、やはり大坂志郎演じる浪人のあれは、自分が
テロに加担したことがわかったときの当然の報いが思われてのことなのか、過剰な本人の思い
込みなのか、理解に苦しみますが、その分切実さを表現することになっています。
』(典拠)。

by munojiya | 2015-04-18 00:02 | 余外篇 | Trackback | Comments(0)

うまいお酒があります その楽しみを語ります


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