2016-12-30 韜晦
「韜晦」。「とうかい」と読む。
本を読み過ぎることを書淫〈しょいん〉という。
書淫になると覚える言葉が「韜晦」である。
自慢でないが、「韜晦」、庵主は書けないのである。

庵主は、「薔薇」はなんとか書けるが、「讒言」とか「纏う」になるともう書けない。
「韜晦」も書けない漢字に列しているのである。
庵主もいっぱしの「嫌韓人〈けんかんにん〉」だから「韋」の字を見るだけで辟易するのである。
「韋」は偉人の韋だから立派なことをいうのだろうに、「韓国」の「韋」は皮肉か嫌味か自虐か。

韓国も立派な国という意味なのだろうが、残念なことに国民のレベルが、以下省略。
「韜晦」。それは庵主が死ぬまでに一度は使ってみたい憧れの言葉なのである。
『[島崎藤村は]それが30歳をすぎて「破戒」を構想し、それを自費出版したのちに二人の娘
をつづけて失ってからは、しだいに漂泊と韜晦の二つに惹かれていったかに見える。』(典拠)。

「韜晦」は「きざ」と読むのかもしれない。漢字の読み方は自由なのだから。
次の言葉も一度は使ってみたい表現である。多言無用の境地のことである。
藤村はこの最も劇的な場面で、よけいな言葉を費やさない。』(同)。
言葉で言わなくても自分には分かるという韜晦である。旨いお酒もそうだからよく分かるのだ。

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松岡正剛の文書が面白い。その一端を引用しておく。
では、過誤ではない歴史とは何なのか。過誤を避ければ苦渋がないかといえば、そんなこと
もはや日本の歴史にはおこりそうもなく、たとえば三島由紀夫の自決のようなかたちでしか
あらわれないものかもしれないのだが、それでも藤村は結果的ではあるけれど、

唯一、「夜明け前」をもってその過誤を問うたのだった。答えがあるわけではない。むしろ
青山半蔵の挫折が答えであった。
いやいや、「夜明け前」には答えがある、という見解もある。このことをいちはやく指摘した
のは保田與重郎であった。

いまは「戴冠詩人の御一人者」(昭和13年)に収録されている「明治の精神」には、次の
ような意見が述べられている。「鉄幹も子規も漱石も、何かに欠けてゐた。ただ透谷の友藤村が、
一人きりで西洋に対抗しうる国民文学の完成を努めたのである」。
実はこの一文には、篠田一士も気がついていた。

篠田はこの保田の一文に気をとられ、自分の評価の言葉を失ったとさえいえる。しかし、さすが
に「夜明け前」を国民文学の最高傑作だというふうには言うべきではないだろう。
そこは徳富蘇峰とはちがっている。』(典拠)。
庵主はこれを読んでいて、意味が判らなくてもワクワクしてくるのである。又本屋に行こうかと。

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そういうわけだから、「夜明け前」を国民文学とか西洋との対決とはいえないのだが、それで
もこの作品は日本の近代文学史上の唯一の実験を果たした作品だったのである。われわれは半蔵
の挫折を通して、日本の意味を知る。もう一度くりかえてしておくが、その“実験”とは、
いまなお日本人が避けつづけている明治維新の意味を問うというものだった。

どうも「千夜千冊」にしては、長くなってしまったようだ。その理由は、おそらくぼくがこれを
綴っているのが20世紀の最後の年末だというためだろう。
ぼくは20世紀を不満をもって終えようとしている。とくに日本の20世紀について、誰も
何にも議論しないですまそうとしていることに、ひどく疑問をもっている。

われわれこそ、真の「夜明け前」にいるのではないか、そんな怒りのようなものさえこみあげる
のだ。』(典拠)。
引用文は、書名の「夜明け前」は“『夜明け前』”と二重括弧が使われているが、ここでは庵主の
引用規則に従ってシングル括弧にしてある。

したがって引用文最後の『真の「夜明け前」にいるのではないか』の「夜明け前」は書名のそれ
と区別する括弧だということである。
庵主がこれを書いているのは2016年も押し詰まった12月29日である。区切りの前には人
はセンタメンタルになるようである。昭和最後の秋のときも、人はそうだったようだ。

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「昭和最後の秋のこと」は、庵主はたまたま山下ヤスミンを知って初めて聴いた歌である。
名曲である。
作詞阿久悠、作曲浜圭介。
浜圭介が歌う「昭和最後」も味がある。

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by munojiya | 2016-12-30 00:04 | 世話物 | Trackback | Comments(0)
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