とんかつ屋のお酒
とんかつ屋にうまいお酒なしである。
ぞんがいこれはいいと思ったのはあるとんかつ屋で飲んだ白ワインだった。
爾来庵主は粉物には白ワインということになっている。
とんかつのような油ものにはビールの方が合うようだ。
ビヤホールの料理が油で揚げたものが多いのもそれがビールに合うからなのだろう。
日本酒に油ものはちょっと荷が勝ちすぎるようである。
荒木町に、正確にいうと車力門通りに「鈴新」(すずしん)というとんかつ屋がある。
そこのお酒が「天の戸」(あまのと)と「南」(みなみ)の生酒であった。
「天の戸」の説明には「とんかつによく合うお酒です」と書かれている。
もちろんそれである。
とんかつは、この店の売りであるかけかつ丼にした。
出てきた「天の戸」はうっすらと飴色で昔ならその色だけで馬鹿にされたところである。
しかし造りは本物である、呑んでみるとこってりと重い味わいがした。
うまいとはいえないが決してまずい酒ではない確固たる主張のある味がそこにあった。
そういうお酒を出してくれるお店だからこの次は「南 純米 中汲み生」である。