浮気の酒、一途の酒
艶福ですねと揶揄されて、軽佻浮薄な男だと思われるところである。
次から次に呑むお酒を変えて憚(はばか)らない腰の据わらない呑み方のことである。
庵主の呑み方がそれである。
庵主がお酒が好きだというと
一番好きなお酒は何ですかと聞かれることがあるが、
毎日異なる銘柄を呑んでいるのだから、好きもなにもあったものではない。
いうならば、一人の女では我慢できないただの女たらしなのである。
というのも、お酒にはいい女が多過ぎるからである。
今日の女より、間違いなく明日の女の方がいいのである、見掛けといい、情といい。
明後日に呑むお酒に期待するのは当たり前だろう。
そして、その明後日のお酒はたしかにそれまでの酒よりうまいのである。
日本酒は確実に進歩している、そのことで良くなっているとまではいわないが。
祖父の代からの一つの銘柄に親しんでいるという呑み方もあるが、
そして、その方がなんとなく大人の風情を感じるのだが、
庵主は酒をくらっているのではなく、味わっているのだからそれはないのである。