うまい
日常生活というのはさしてうまいものではないからである。
日常の生活をケといい、そうでない時をハレということがある。
うまいというのはハレの言葉なのである、その機会は数少ないということである。
煙草や酒がやめられないのは、表面的には中毒症状であるが、
うまいという快感が味わえるからやめれられなくなるのである。
うまいというのは普通は物を食ったときに使われる表現であるが、
酒や煙草はそのうまいが容易に得られるから重宝なのである。
いいお酒というのはうまいという快感と出会える確率が高いお酒のことをいう。
普通酒といい、経済酒といい、洒落てレギュラー酒といい、または紙パック酒と呼ばれる
どうしようもない「日本酒」はそのうまいに出会えることがほとんどない代物である。
うまくもない酒を呑まされる苦痛に耐えなければならない根性で呑む酒なのである。
庵主は根性がないから庵主はそういうお酒には興味がないのである。
一転して、まともなお酒の世界に踏み込むと、うまい、の目白押しである。
その世界が魅力的なのは、これまでに出会ったことがないうまいに出会えることである。
それまで知らなかったうまさがドンドン広がるのだからやみつきになるのである。