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番外篇 いい活字は美しくてはいけない

久しぶりに本屋で立ち読みをした。
昔とちがって、ほんの数ページをめくってみるだけである。
一冊を読み切る気力がなくなったからである、おっとそれをやったら情報窃盗じゃないか。
いまはその本の版面(はんづら)を眺めるだけである。

それだけで、その本の気合を感じるからである。
造り手の気持ちがそれで、なんとなく伝わってくるからである。
版面が美しくない本を読みつづけるのはつらい。
どうせ中身はたいしたことは書かれていないのだから、読むなら見掛けが美しい本がいい。

中には見掛けだけで本当に中身がない本もあるがそれは絵を見ているとあきらめて。
美人がそうであるが、見掛けが美しいというのはそれなりの価値があるからである。
人の品格とはその見掛けを磨くことだからである、中身はどうでもいいのである。
そういえば、お酒も商品だから見掛けは美しいものがあるのは本と同じである。

それは内田樹(著者名敬称略)の本だと思ったがその中にそれがあった。
いい活字とは、美しいこともさることながら見飽きしないものである、という卓見である。
活字は美しいというのも目障りだということである、目立つ書体はすぐ見飽きるのである。
たしかに、うまいお酒よりも呑み飽きしないお酒というのがよりいいお酒なのである。

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活字に、美しいとされている精興社(せいこうしゃ)の明朝体がある。
一目見れば誰でもわかる独特のデザインであるが、すぐそれが鼻につくこと請け合いである。
庵主はそれを使っている本を見るとつい退いてしまうのである、書体がうるさいからである。
話は変わるが、庵主はこういう楽しい美しさが好きなのである、おあそびともいうが。

自分で書いた上の文章を読み返していてハタと気がついたのだが、
内田樹の本の中から、庵主の物の見方が変わる一行を読み取ってしまったら、
その本をまるまる立ち読みしたのと同じなのではないかということである。
立ち読みは業界の許容された慣習ということで、合法的情報窃盗ということにしておこう。

by munojiya | 2008-12-29 09:10 | Trackback | Comments(0)

うまいお酒があります その楽しみを語ります


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