「うまいお酒」は形容矛盾 <水曜日は二本立>
それはひょっとしたら形容矛盾なのではないかとふと思ったのである。
形容矛盾というのは、真っ白い黒というようなものである。
文法上は間違いではないが、意味上、あるいは現実にはありえない形容をいう。
お酒はうまいのかということである。
庵主は数多くのいいお酒を呑む機会があったが、
そのほとんどはうまいものではなかったからである。
いいお酒を造ろうという意欲は感じられてもそれがうまいとは限らないということである。
それが現実である。
それなのに、お酒をうまいと書いたら嘘を書いていることになる。
正しくは、うまくないのがお酒なのである。
では、なぜうまいお酒と書くのか。
実は、うまいというのはお酒に掛かる形容詞ではないのである。
お酒がもたらしてくれる感興に対する形容なのである。
そのお酒の気合と呑み手の気持ちが一致したときに感じる快感をうまいというのである。
故にお酒そのものがうまいのだと思って呑んだのでは本当のうまさは味わえないのである。