老婆が、電車の優先席を占有していた若い乗客達を窘〈たしなめ〉めたという。
『一人のおばぁちゃんが物凄い形相(ぎょうそう)で、こちらに近付いて来た。
……かと思うと、「どきなさい!」と言って、ボクの隣の学生の手を引っ張って席を立たせた。
それから、その儘こんどは、もう一つ隣の席の目をつむっている女性に向かって「あんたもよ!」
と言いながら凄い勢いで手を引っ張って立ち上がらせたんです。[中略]
そして今度は、さっきボクに席を譲った若者に向かって「邪魔なんだよ。通れないだろう!」と、
思い切り横に払った。』(典拠)。
その時の決めゼリフが凄いのである。
絶対反論できないのである。
『「私らは苦労して戦争を生き抜いて、年をとって来たんだ!」と大声で怒鳴り続けている。』。
「俺達はナチスに虐殺されたユダヤ人だ」というのもある。じゃ、今どうして生きているのか。
「俺達は日本に強制連行された」というのもある。連行されたのは戦後の事だというのだ。
最近では「私は性奴隷にされた」というのもある。反論するのも大人げないのである。
馬鹿馬鹿しくて、である。自分は正義だから何をやってもいいのだ、と言うのだ。節操がない。
「需要があるのだからアルコールを混ぜる事がなぜ悪いか」というのもある。反論できない。
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同じ鈴木淳のブログにこういう話もあった。
39年前の話だという。ただし、今は、その時からさらに7年の歳月が流れている。
『先程、「ちあきなおみ」の所属していたプロダクションの社長、吉田尚人氏(故人)の
ご子息、吉田竜太君から電話がかかって来た。
「今日は、ちあきなおみが『雨に濡れた慕情』でデビューした日なので、どうしても先生に
お礼が言いたくて……」という事だった。』(典拠。
故人の命日にというのならよくあるだろうが、デビュー日を偲んでという所が凄〈にく〉い。
鈴木淳も嬉しかった事だろう。自分の仕事を覚えててくれる人がいたのだから。