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091009 数多いお酒の本で一番可愛がられている一冊

いまとなっては幻の本となってしまったお酒の本がある。
版元が絶版にしてしまったのである。
間違い探しが好きな庵主にとっては楽しく読ませてもらった一冊である。
島内景二著「大吟醸バガボンド」(〓出版。ゲタは木偏に世)である。その遺影はこちら

多くの人はそれを「バカ本だ」と誤読するだろうから、まさに自虐ギャグの本なのである。
テリー伊藤氏に「お笑い北朝鮮」をはじめとするお笑いシリーズの本があるが、
「大吟醸バガボンド」もお酒の本には珍しいお笑い本なのである。
誤植も多いが、ツッコミどころも満載なので、お酒マニアなら楽しんで読める一冊である。

間違いの箇所に気付くということは、それだけお酒の知識があるということだからである。
少しはお酒のことがわかってきたかなという優越感を感じながら読めるのである。
芸人の技は、客の優越感を満足させるというところにある。
実際は芸人の技の方がずっと上にあるのに、客にその芸が理解できたと思わせるのである。

どうだ俺の芸は凄いだろうというのは、見ていて疲れるものだからである。
金を払ってまで疲れたくはないのである。金を払って、まずい酒を呑みたくないのと同じ。
本当にいいお酒は呑み手を疲れさせないのである。そしてまた味わってみたくなるのである。
読者に優越感を与える点では、この本は技のある本なのである。ただ間違いが多かったのである。

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〓は、パソコンで打てない文字のときに代用する記号。
印刷屋で、その活字が手元にない時に活字をひっくり返して使ったもの。
下駄の歯に似ているので「ゲタ」という。ない活字は後から買ってきて差し替える。
木偏に世は「えい」と読む。酒銘にも読めないものがあるが、これも読めない。悪字と呼ぶべきか。

by munojiya | 2009-10-09 01:08 | 酩酊篇 | Trackback | Comments(0)

うまいお酒があります その楽しみを語ります


by munojiya