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100110 日曜日のくつろぎ篇 「馬拉桑」は粟の酒

「馬拉桑〈マラサン〉」という酒がある。粟〈あわ〉から造った酒だという。
映画の中に出てきた酒である。
映画は台湾映画「海角七号〈かいかくななごう〉」である。
「海角七号」(予告編。音有り)がやっと日本に上陸した。配給はマクザムという会社である。

東京ではシネスイッチ銀座でしか見ることができない。近所にチケットショップあり。
というより、シネスイッチ銀座で見ることができるというべきか。
ひっそり公開されているが、しかし、この映画、台湾では史上最高ヒットの映画だという。
興行収入では「タイタニック」が一位だというが、台湾映画としては頂点に輝いたのである。

前田有一評によると、ダサイCG、壺が外れているギャグ、要忍耐の前半の展開とあって、
果たしてそれで本当に泣くことができるかと心配になるが、同評のいうとおり後半はすごい。
全然心配することはなかった。見終わった時には、庵主の目はぱっちりしていたのである。
自前のシャワーで目を存分に洗うことができたからである。目の曇りまで綺麗にしてくれた。

ラブレター(支那語では「情書」という)の書き方を懇切丁寧に教えてくれる教養映画である。
「捨てたのではない。大切なものを泣く泣く手放したのである」。お酒をやめる人の気持も。
庵主はロック音楽が分からなかったが、この映画でその意味がやっと分かったのである。
ところで、中孝介〈あたり・こうすけ〉って誰なのか庵主は全然知らなかったのである。

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「馬拉桑」 映画は2008年8月封切りだという。台湾に1年半遅れている。
で、「馬拉桑」に格別の意味はないのだろうが、馬といえば馬英九、拉といえば拉致、
桑といえば、「父さん」の漢字書き「父桑」を思い浮かべるのである。
それを意味有りに受け取るのはたぶん考え過ぎだろうが、それはうまい酒のようである。

『手紙は「小島友子」という日本名の台湾人女性に宛てられています。
「小島」=「小さい島」=「台湾」という類推で、あれは“一個人”に宛てて書かれたというよりも
“台湾そのもの”に向けて書かれた手紙なのだ、そして「小島友子」は台湾の象徴なのだという
解釈も成り立ち得ますが……。』(リンク先の監督インタビューから)

前田有一節『その秘密は私が思うに、終盤のライブシーンでのやりとりに隠されている。
ここで演奏前、主人公が田中千絵に言う台詞は非常に思わせぶりである。
恐らくこれを戦中世代の台湾人が聞いたら、胸にぐっとくるものがあるのではないか。』
見る前にこのことを聞いていなかったら、きっとそれを聞き漏らすはずである。

まだ見ていない人のための映画評はそういうところを漏らしてはいけないということである。
『だが、それを認識した上で本作のラストを見ると、その感動は4倍増となる。』。納得。
映画を語ることはそれをいかにおいしく見るかということである。貶しても益はない。
お酒の呑み方と同じである。かりに不味い酒であってもそれをいかに楽しむかなのである。

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お酒も映画も所詮時間潰しだから、その優劣を論じても大して意味がないからである。

by munojiya | 2010-01-10 00:35 | 日曜日のくつろぎ篇 | Trackback | Comments(0)

うまいお酒があります その楽しみを語ります


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