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10-01-21 「〆張鶴」しぼり多て

庵主が「鶴齢〈かくれい〉」「村祐〈むらゆう〉」と出会う前に唯一うまいと思った新潟酒は
「〆張鶴〈しめはりつる〉」だった。
当時新潟のお酒というのは、淡麗辛口で一世を風靡していたが、
その造りは活性炭の使い過ぎを特徴としていた。

活性炭はキムコみたいな粉末の炭で雑味を濾過するために使っていたようである。
活性炭は、雑味の部分も吸着するが、同時にうま味も吸い取ってしまうから、
使いすぎるとお酒のうまさもなくなってしまい、スカスカのお酒になってしまうのである。
そのかわり、水のように淡麗な酒になるのである。庵主はそれを腰のない酒というが。

味わって呑むと心許ないが水代わりに呑む分には障りのない恰好のお酒だったのである。
いまなら無濾過の、ほんのり黄金色〈やまぶきいろ〉をしたお酒が出回っているが、
そのころは、酒造業界では、無色透明のお酒がもてはやされていたのである。
新潟には「越乃寒梅」というスター酒があったからその人気に倣ったこともあるのだろう。

お酒の売場にあった「〆張鶴」のしぼり多て生酒である。すっと目が行く。
この辺は庵主の長い飲酒生活からくる直観である。そのお酒に目が吸い込まれるのである。
四合瓶で、税込1019円だった。その値段もよしである。その値段に引かれたのかもしれない。
期待をうらぎることのないお酒だった。お酒の甘さが、その品のよさが心にしみたのである。
by munojiya | 2010-01-21 00:27 | 酩酊篇 | Trackback | Comments(0)

うまいお酒があります その楽しみを語ります


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