2010-05-03 それは逆 書とは字を書くことではない
見た目は、字を書くことである。
しかも毛筆に墨汁を含ませて和紙に書く。
かつ、そうして書かれた文字が庵主には読めないことが少なくない。
字というのは、そこに書かれている線をいうのではない、というのは庵主の逆説である。
その線が書かれている紙などのことをいうのだと常識をひっくり返すのである。
たとえぱガラスには、水性のインクでは字が書けない。
インクがしみこまないので(定着しないので)筆跡が残らないからである。
ということは、文字というのはその線状をいうのではなく、書かれる物の方をいうのである。
筆跡が残らないものは文字とは言わない。空気や液体には文字を書くことができないのである。
空中や水に字を書く動作は書道とは呼ばない。書道とは書かれた筆跡をいうのである。
書道とは筆跡を残す行為をいうから書かれた文字が読めなくてもいいのである。
文字を表すということが目的だからである。文字はその時の気分にすぎないのである。
墨汁も、その液体を言うのではなく、墨を磨るという行為をいうのである。
墨を磨るときの心の持ち様をいうのである。筆跡は結果であってそれを書く過程が書である。
お酒も、酔うのは結果であって、呑んでいるときに心に浮かぶ思いに意味があるのである。