2011-05-19 お懐の中のもの
語尾が違っているようである。「気〈きぃ〉つけよしやって」だったか、そんな感じだった。
ラジオで聞いたセリフだから肝心のその部分の記憶が定かでないのである。
その最後の部分の言葉遣いが微妙だったのである。いや、絶妙だったのである。
実に品のある嫌味だったのである。
なるほど京の言葉遣いは雅びだなと感じさせる言葉遣いだったのだが、
庵主は田舎者だから、その言葉を聞き取れなかったのである。
普段、そういう言葉を耳にしていないからである。
懐の中のものとは、ぐい呑みである。
ある人が、京都のとある料亭で接待を受けたときに出てきたぐい呑みが気に入ったので、
さりげなく懐に忍ばせて出てきたのだという。
格式のある料亭なので、そこで使われている器もそれなりのものと思われる。
玄関で女将の見送りを受けたときに、女将がさりげなく「気遣い」をしてくれたという。
それが冒頭のセリフである。
接待してくれた先様からはいやな目で見られたという。
さすが京都である。「このお酒、はんなりしてますなぁ。器の具合が」といったところか。