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2011-06-18 「一本義物語」

近頃流行る酒銘は、杜氏の名前を付けたお酒である。
嚆矢は、静岡のお酒「開運」の大吟醸「波瀬正吉〈はせしょうきち〉」か。
時には、杜氏の苗字だけを付けたものもある。たとえば、千葉の「東薫」の「及川」である。
いずれにしても、その蔵の誇りのお酒に付けられる酒銘である。

そして、その蔵元の酒造りの姿勢を高く掲げた酒銘が福井の「一本義物語」である。
呑むお酒ではなく、語るお酒だということである。
贅を極めたお酒のことである。技を極めたお酒だということである。
うまいとかまずいとかいった次元を越えているお酒である。

うまいまずいのお酒なら、旨いか不味いかを断じたら終わりである。
しかし、「一本義物語」はお酒を語りたくなるのである。語って尽きないお酒なのである。
その味を「うまい」と言っていいものか、「深い」というべきなのか。思いはめぐるのである。
いや、その味わいは文学なのかもしれない。人間が辿り着いた一つのの真実なのである。

東京ではなかなか呑めないお酒というのがある。
地元でしか売っていない低価格のお酒が一つ。
そして、値段は高いのに、地元でほとんど全部売れてしまうお酒が二つ目のそれである。
「一本義物語」はその二つ目のお酒なのである。そのお酒を東京で呑めたのは僥倖だった。
by munojiya | 2011-06-18 00:36 | 酩酊篇 | Trackback | Comments(0)

うまいお酒があります その楽しみを語ります


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