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2012-10-28 本を読む父の光景

そういえば、庵主は父が本を読んでいる光景を見たという記憶がないのである。
そもそも父は蔵書を持たない人だった。
うちにあった本は、分厚い、そしてかなり古くなった漢和辞典と実用国語辞典である。
実用国語辞典というのは、見出し語にペン書きの書体と英訳がついている辞典である。

お酒でいえば普通酒みたいな辞書である。味わいは深くないが当面の用には十分なのである。
子供は親の背中を見て育つという。そういう親の背中を見て庵主は育ったのである。
宮崎勉が逮捕された時、その部屋には数千巻のエロビデオとか変態ビデオがあったという。
それを異常だと思ったが、よく考えたら庵主にもその程度の数の蔵書があったのである。

傍から見れば、数多くの蔵書〈コレクション〉を抱える人は異常に見えるということである。
読書を愛し書棚に本が溢れている作家を親に持った子供はきっと心苦しいことだろう。
庵主の父は、息子にそういう思いをさせなかったのである。
唯一、父が読んでいたのは、十数巻あった「生命の実相」である。

いつも父の寝床の傍にその本が置かれていたから、多分読んでいたものと思われる。
故人となった父が、生命の実相に辿り着けたかどうかは庵主には知る由もないのである。
父はまた酒も少量しか呑めなかった。すぐ顔が赤くなった。庵主はその血を引いている。
庵主も酒量は小さい。味わって呑むお酒だからこそいつまでも楽しんでいられるのである。
by munojiya | 2012-10-28 00:01 | 番外篇 | Trackback | Comments(0)

うまいお酒があります その楽しみを語ります


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