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2012-11-17 境地

境地に至る。
境地というのは辞書的な意味もあるだろうが、庵主がいう境地とは到達点ということである。
ならば、到達点という言葉を使えばいいのだが、しかし、それは境地でなければならない。
何の到達点かというと、自分の居場所を見つけたという意味だからである。

自分が納得できる所に達したという思いを境地というのである。
世の中にはもっといいものがあるが、自分にはそれで十分満足できるという充足点である。
上を見たらきりがないといって戒めるが、下を見てもきりがないのである。
上と下の間に、人は位置しているのだが、その位置が分からないのである。

自分のいる位置の、おおよその見当がつくことを境地に達したというわけである。
何の話をしているかというと、お酒の味わいのことである。
庵主のお酒は、「鷹勇〈たかいさみ〉」の味わいで境地に達したと感じたのである。
「鷹勇」は、庵主のいう「うまい」お酒なのかというと、ちょっと違うのである。

うまいから呑みたいというお酒ではない。その味わいにある格調の高さに心がひかれるのだ。
いいものに触れる喜びを感じるお酒である。お酒に見識を感じる実直な味わいなのである。
ああ、庵主もこの味わいが理解できるようになったのだと嬉しくなるお酒なのである。
この味わいのよさが判ればもうお酒は十分であると実感したのである。長い旅だった。

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それ以上を求めることもないと。境地とは、自分の器を見定めることなのである。
華美に走らず、他におもねず、清楚な気風に満ちている。一本筋が通っている品のよさ。
一見派手な所のない地味な味わいであるが、実は闊達な自己主張を湛えた味わいなのである。
日本人がいう「地味」とは実は「派手」であるように判る人には見える味わいのことである。

by munojiya | 2012-11-17 00:03 | 酩酊篇 | Trackback | Comments(0)

うまいお酒があります その楽しみを語ります


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