「贅沢」という言葉がある。
庵主なんぞが、高いお酒を呑む機会にめぐり合える事をいう。
分〈ぶ〉に不相応な僥倖〈ぎょうこう〉をいうのである。
贅沢は有り難いのである。
かつ、そのお酒を本当に口にすることをいうのである。
分を弁えない見苦しい振る舞いの事である。
人格高潔、陰徳重畳の諸先輩を差し置いてうまいお酒を呑むことである。
贅沢は己の器を量る試練なのである。
だから、庵主は人に隠れてそっと贅沢を味わわせて貰うのである。
というより、今庵主が呑んでいるお酒がどれほどのものかを見る目がない人が多いのだ。
傍目には、無名の酒しか呑めない清貧な酒呑みにしか見えないのである。
その実、そのお酒は贅沢を越えた美酒である事が多い。本当に旨いお酒がそれなのである。
『4枚のジャック、クイーン、キングを重ねると一瞬で並びが変わり、さらにスペードのAを
加えると予想外の変化が置きます。レギュラーだけでも演じることはできるかもしれませんが、
トリック・カードを贅沢に使うからこそ起こすことができる極上の不思議さです。』(
典拠)。
手品の「贅沢」もまた得難い僥倖なのである。それを見る事ができる有り難さである。