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無粋だねぇ

粋(いき)という言葉がある。(裏も表も知ってて、すっきり)
いなせという言葉もある。(それを志向して、すっきり)
堅気という言葉もある。(それしかできなくて、すっきり)
いずれもすっきりした振る舞いをいう。

すっきりを英語でいえばスマートである。
スマートには賢いという意味もあるという。
スマートは軽量級の身のこなしをいうのだろう。
かっこいいと訳しても当たりなのかもしれない。

粋の反対語は野暮なのだろうが、
野暮ということば自体が野暮なのでそういうときは無粋(ぶすい)という。
ダサイという言葉がある。
それ自体がダサイ言葉である。

名は体をあらわすというが、
ダサイという言葉がそれ自体ダサイのに似て
野暮もそれ自体がやぼったいのだけれどこれはこれで逆に粋な表現なのかもしれない。
野暮をからかっている雰囲気がよく出ているからである。

からかうということは
自分が対象に対して優越感をもっているということである。
そのかわり、からかった対象に対しては
体を張って守ってやるという気構えを持っていなければならないということである。

その気構えがある人をいなせという。
ない人を単にやくざという。
からかうことは愛情の裏返しでもある。
また野暮は人の振りみてわが振りなおせなのである。

うっかりすると俺も野暮なことをやっているなという自戒なのである。
もっとかっこよく振る舞いたいという美意識の発露である。
そう、美意識なのである。
美意識は差別の根源であるというのが庵主の自説である。

日本人はけっこう美意識には敏感なようである。
江戸時代にはやった浮世絵は
庶民の間にもてはやされたという。
いいものがわかるのである。

日本人は買い物においても商品に対する要求水準が高いといわれている。
外国人からすれば過剰品質ともいえる製品でないと売れないという。
いい仕事にはお金を出すという気風があるということである。
しかしそれにしてはお酒に対する要求水準が低いのが解せないのである。

というのも昔はお酒の選択肢が狭かったからである。
今と違って大吟醸だの吟醸酒といった品質の多様性もなかった。
日本酒のそのような変化に日本人の感覚がついていけないということなのである。
だから「むの字屋」は現代日本酒を布教するためにこうして尽力しているのである。

無粋といえば、
客が、お店の符丁を使うというのがその代表的例である。
お客が寿司屋でお愛想、あがり、むらさきというのがそうである。
業界用語を部外者が使うのはみっともない。

普通酒という言葉も業界用語だろう。
普通酒と表示して売られている日本酒を見たことがないからである。
普通酒を下さいといってお酒を買いにいく人もいないからである。
その言葉を平気で使っている庵主は呑み手なのに業界寄りなのである。

そういうのって無粋なんだろうなと
はたと気がつくのである。
素人はそういう符丁で呼ばれる酒には近づかない方がいい。
だから庵主もできれば普通酒には関わりあいになりたくないと思っているのである。

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庵主の自説に興味がある方はこちらもどうぞ。
by munojiya | 2006-02-27 22:17 | Trackback | Comments(0)

うまいお酒があります その楽しみを語ります


by munojiya