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佐伯祐三、松本竣介、モジリアーニ

岡野浩二(おかの・こうじ)という画家がいる。
画面に大きな白いまん丸を描いただけの絵がある。
見た目はコンパスで描いたような綺麗な円である。
そしてその白は真っ白である。

その白がこころよいのである。
白い絵の具で描かれているのだが、
その白は絵の具の白を越えて
庵主の心の中にある観念的な白に近い。

蠱惑的である。
妖しい白である。
心が吸いこまれる白である。
庵主は絵を見ても色しか見ないからその色が美しい時には心が引かれてしまう。 

若いころにいいと思っていたのが
佐伯祐三(さえき・ゆうぞう)の絵であり、
松本竣介(まつもと・しゅんすけ)の絵であり、
モジリア-ニの絵だったという。

還暦を前にして
いまではそれらの絵では心が満足できなくなったという。
この3人は庵主の好みとぴったり重なるからつい吹き出してしまったのである。
たしかにそのとおりだと思ったからである。

そしてそれは庵主が歳をとったあかしだと思ったからである。
お酒でいえば
それらのお酒は庵主の好みのお酒である。
まるでフルーツのような香りがする吟醸酒である。

それらはたしかにいいお酒なのである。
華があるお酒である。
しかし、いろいろなお酒を呑んできたら
もっとシンプルな味わいのお酒によりうまさを感じるようになったのである。

もちろん、うまくないお酒は庵主にはもう呑めない。
呑むときはうまいお酒でなくてはならない。
そういうお酒をちゃんと造ってくれる杜氏は少なくないということである。
そのことを知っているだけに日本酒は庵主の心を掴んで放さないのである。

お酒も絵もそれに接したときの感懐は、
才気の感じられるにぎやかなものをへて
おちついたものにより安らぎを感じるようになるもののようだ。
才気とか主張がうるさいものはもういいやという気持ちになる。

日本酒は
昔の純米酒しか造れなかったころのお酒と
今日(こんにち)の現代日本酒とはその中身が違っているということである。
先端的な日本酒は実用を越えて美に向かっていることは間違いない。

日本酒のうまさが庵主の心を引きつけるのは
絵を見る時に感じる快感と同じような美しさをそこに感じるからである。
庵主はいいお酒は芸術品だと思っているが
最先端の日本酒はこれからますますそれに磨きがかかることだろう。

岡野浩二は仮説を立てて絵を書いているという。
日本酒もその造りは仮説に基づいて造るという道を進むことになるだろう。
いまでもある人は花酵母の可能性を探ったり
新しい米を使って日本酒のうまさを追求している。

その成果が次々に味わえるのだから現在の日本酒はたまらない。
今の日本酒はめちゃくちゃに面白いのである。
もちろん庵主は自分にとってはこういうお酒が究極だといえる酒をすでに知っている。
そのお酒の再現性をどうやって高められるかが庵主の注目しているところである。
by munojiya | 2006-03-01 21:57 | Trackback | Comments(0)

うまいお酒があります その楽しみを語ります


by munojiya