「黄桜」を呑む
高めのお酒であることが多い。
15度の酒だとなんとなく水っぽく感じる。
あくまでも感じるのである。先入観といえばそれまでだが。
日本酒はアルコール度数を1度下げると
酒税が1キロリットルあたり約1万円安くなるから
製品価格をその分安くして売るという
販売テクニックがある。
そんな水くさいお酒を呑む人がいるのだろうかと思っていたら
本当にあったのである。
「黄桜 山廃仕込 生貯蔵酒」は、アルコール分
13度以上14度未満とある。
表ラベルには「杜氏伝承の技」とある。
「原材料名/米・米麹 醸造アルコール」とある。
裏ラベルを見る。
「キリッと『巾』ある旨さです。 黄桜山廃仕込 生貯蔵酒 300ml詰」
「『山廃仕込・生貯蔵酒』は、自然の力でゆっくりと酒母を育てた
山廃仕込の『巾』ある旨さをそのまま生貯蔵酒に仕上げました。
冷やして上手い、ふくらみとコク。喉ごしが良く、爽かな口あたり。
清冽な味と香りが特徴です。」
「●お召し上り方/冷やして、またはロックでお召し上り下さい。
アルコール度数/13.5度 日本酒度/+1 三度/1.3
アミノ酸度/1.2」
生酒を詰口時に加熱処理しています。」
注意書きは3点である。
「■冷暗所に保存してください。」
「■なるべくお早めにお召し上り下さい。」
「■飲酒は20歳を過ぎてから」
このお酒のよさはその容量にある。300mlである。
これならかりにうまくなくてもすぐ呑めてしまうから
悔いがあとに長く残らないところがいい。
それが1升瓶だったら恨みが残る。騙されたという記憶が明瞭に残るのである。
300mlは詰める方は中途半端な面倒くさいサイズかもしれないが、
缶ビールなどは350mlが主流であることを考えれば、
面倒くさいは当たらないだろう。
そう思うのは呑み手の立場より造り手の立場を優先させた発想なのである。
最近は百貨店で大吟醸の300ml瓶が並んでいるのを目にする。
それでも2500円とか3000円とかたしかに高いのではあるが、
1升瓶ならその6倍である、買うには勇気がいる。
それが300mlならなんとか買えるのである。
1升1万円の大吟醸を1合壜に入れて税込1050円で
売っていることがあるが、
庵主はこれがうれしい。
高い大吟醸も1000円なら買えるからである。
1升瓶はたしかに美しい容れ物ではあるが、
冷蔵庫には入らない、呑み残すとお酒が空気を吸ってしまうなどと
いろいろ問題も多いのである。
安いお酒ならそれでも我慢できるが高いお酒ではそれは困る。
「黄桜」はかつて三増酒が全盛のときに、
数少ない純米酒を出していた蔵だった。それが結構うまかったのである。
だから、ときには目をやるのだが、
「山廃仕込・生貯蔵酒」の味については書かないうちに紙数が尽きてしまった。