お酒を語る言葉を造るということである
庵主はただの呑み手なのに歳を見てお酒のオーソリティーと思っていたらしいのだ。
その人に聞きたいことがあってメールで二、三の質問をしたことがある。
その時に庵主が書いた質問事項の書き方を威圧的に感じたというのである。
手抜きをして質問事項のポイントだけ書いたものだからたしかに配慮が足りなかった。
相手のお酒の好みを否定するような印象の文章になってしまっていたからである。
たしかに取りようによっては押しつけ的とも感じる質問の書き方ではあったが、
庵主が聞きたかったのはその人の感性でお酒の味わいを表現した言葉なのである。
知りたかったのは女の人がなぜその酒に引かれているのかという理由なのである。
若い人がお酒を呑んだときに感じている味わいをどう表現するかということなのである。
日本酒は長く造り手の世界だった。
だからお酒を語る言葉は老ね香だとか炭香とかみんな造り手の言葉なのである。
呑み手がお酒を語る言葉が、お酒を楽しんで呑むための言葉がなかったのである。
呑み手が登場したのは昭和50年代に吟醸酒が市販されるようになってからである。
今の日本酒の呑み手はお酒を語る言葉を一生懸命に模索している最中なのである。
だから呑み手にオーソリティーなどというのはまだないということなのである。