表現できない香り
香りの表現でひっかかってしまうということである。
色なら、赤といえばそれを聞いた人も似たような色を思い浮かべるが、
香りはそうはいかない。
いちばんおかしいのは香水のカタログである。
みんないい匂いとしか書いていないのである。
フローラルな香りとか、グリーンな香りとか、オリエンタルな香りと書かれても
どんな匂いなのかわかるだろうか。
シャネルのナンバーファイブは名前だけは多くの人が知っているだろうが
それがどんな香りなのか言葉で伝えることができるだろうか。
りんごの香りや、みかんの香りという誰もが経験したことのある匂いなら伝えられるが、
香水のように芸術的な香りにはその手は使えない。
そうなると香りのよしあしを伝えるためには相手の教養に訴えるしかないということなる。
日本酒をやっている人が読むと大笑いするワインの味わい表現になってしまうのである。
日本酒でもカプロン酸とか酢酸イソアミルなどの匂いはすぐおぼえられるが、
香水ではないのだからそれだけではお酒の香りの豊かさを表現できないのである。