ルビが大好き
ふりがなのことを印刷用語でルビという(正しくはそうではないが一般的には、である)。
5.5ポイント活字を英国の印刷業界では宝石名のルビーと呼びならわしていたという。
その大きさの活字が日本ではふりがなに使われたことからルビと呼ばれるようになった。
庵主はルビが大好きである。
日本語のルビの使い方が好きといったほうが正確であるが。
日本語のルビの使い方は多彩な表現を可能にする魔法である。
それらをまとめて本にしたいと庵主は常々思っているので実例はその本にまかせる。
サントリーの宣伝を担っていた開高健や山口瞳を庵主は「筆達者」と書いたことがある。
そのルビをあえて付けなかったのは、イヤミとしてのルビだったからである。
「筆達者」を「さわし」(詐話師)とするか、「やし」(香具師)とルビを振るか、
どっちが軽妙にとられるかと判断にあたって逡巡したためでもある。
すまじきものは宮仕え、という。
その二人も仕えなければ食っていけないからその間の事情はよくわかるのである。
いい酒がどういうものであるかを書いたらサントリーが造る酒は売れなくなる。
庵主は、本当はその苦衷の間を泳ぐ二人の筆遣いを読むのが面白かったのである。
