日本酒のうまさはどの部分にあるのか
アルコールは酒の重要な要素ではあるが、お酒のうまさはそこにあるのではない。
アルコールがうまいのなら甲類焼酎こそがうまい酒ということになるがそうはいかない。
お酒のうまさはアルコールの上に乗っている微量成分のバランスの妙にあるのである。
味噌汁のうまさは味噌と出汁(だし)の味のバランスにある。
それは酒のうまさとアルコールの関係に似ている。
出汁の味わいが前に出てきて味噌の味わいを凌いだのではうまい味噌汁とはいえない。
普通酒がうまくないのは出汁が前に出てきた味噌汁だからである。
味噌汁はまず味噌の香りと味わいがしっかり感じられなくてはならない。
その味わいを裏打ちしているのが出汁でなくてはいけないのである。
お酒では、アルコールが先に感じられる酒は出汁が鼻につく味噌汁と同じである。
裏方が表にしゃしゃり出てきてはいけないというのが日本人の美意識である。
その美意識からいっても主成分が原料用アルコールというお酒は邪道なのである。
香水は香料をアルコールでといたものである。
香りを楽しむのが目的だが、香りを引き出すためにアルコールが不可欠であるように、
酒のアルコールはそのうまさを引き出すための裏方でなくてはならないのである。