偽の酒
商品としてはそれなりに見掛けがきれいなお酒のことである。
ただそういううまくないお酒を造って楽しいのか、ということである。
需要があるのだから、それを人の為に造っているというのならまさに偽の酒ではないか。
酒質を揃えるためにアルコールをまぜて造ったお酒がうまいかということなのである。
うまくないという一点で、そういうお酒は小蔵元のよくできたお酒に及ばないのである。
ひょっとして、庵主がまだ気付いていない新しい味わいをめざしているのではないかと、
時にはそういうお酒を買って呑んでみるのだが、いつも期待はずれに終わるのである。
醸造酒がアルコール添加に頼るようになった時点で道を踏み外しているのである。
アル添のお酒はうまいまずいは別にしてそれは酒みたいなアルコール飲料なのである。
あれは断じて真っ当なお酒ではない、と庵主は思うが、
酒の好みは人それぞれなので、それがいいという人を窘(たしな)めるものではない。
庵主の好みを語っているだけなのだから、アルコールが混ざっていない酒なんか
本物の日本酒じゃないという考え方の人がいてもただ頷いて聞くことができるのである。
発泡酒(一応本物のビール)にアルコールを混ぜてリキュールとして売っているのは、
酒税を回避するためであるが、アル添の日本酒にはそういう遊び心はないのである。