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酸味の誘惑

庵主が呑めるお酒にはある特徴があることがわかったのは
比較的最近のことである。
それが表に出てくる味わいではなかったので
気がつかなかったのである。

日本酒のみならず
モルトウイスキーや
熟成したラム酒や
紹興酒などにおいてもそれがうまいお酒の隠し味だったのである。

突然香水の話になる。
香水というのはアルコールに香料を溶かしこんだものである。
香料は数十種類、いや数百種類の香気成分を
調合して作るのである。

そして数多くの香料成分の中でも
それがしっかりしていないと
せっかくの香りが生きてこない成分というのがある。
ムスクである。

ムスクは香りの時間もちをよくするためには
欠かせない成分なのである。
ムスクの匂いが表面に出てきたのではいけないが
それがしっかりしていないと香水の深みがでてこないのである。

お酒をうまくするために欠かせない成分とは
酸味のことである。
酸味は強すぎては台無しであるが
それがきちんとしていないとお酒を呑み続けられないのである。

庵主がうまいと感じるお酒は
酸味のうまさがお酒のうまさを支えていることに気付いたのである。
日本酒だけにかぎらず、洋酒においても
庵主が呑める酒とそうでない酒との違いがそこにあったのである。

日本酒では酸味がしっかりしていないと
味の輪郭がぼけてしまって
呑んでいても切れがよくない。
うまい酸味はお酒をなめらかに呑ませてくれるのである。

いま庵主がその酸味のうまさで気に入っているお酒は
「悦凱陣」である。
その酸味の冴えは他の酒とは艶が違うのである。
酸味が色っぽいのである。

「悦凱陣」は造りが少ないから
なかなか出会えないお酒なのだが、
東京では新宿にある讃岐うどんのお店「東京麺通団」で
一番うまいところを呑むことができる。

まずはそこで味わってみてほしい。
酸味のうまさの白眉を呑むことができる。
そのうまさを感じることで
うまい日本酒の中に酸味の魅力がかくれていることがわかるようになる。

呑んでみて
なんとなく物足りないお酒があるとしたら
酸味の味わいが弱いということもその原因の一つである。
逆にいいお酒にはちゃんとそれが生きているということである。

「悦凱陣」は酸味がうまいお酒の典型であるが、
その他には「岩の井」の山廃純米一段仕込という
いなせな酸味を楽しませてくれるお酒もある。
「帰山」という明確な酸味で迫って来るお酒もあるがそれは好みである。
by munojiya | 2005-05-30 23:24 | うまいお酒あります | Trackback | Comments(0)

うまいお酒があります その楽しみを語ります


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