「金のうまさに、麦のコク」
それが当たってしまうのが哀しい。
いま一番気に入っているのはサントリーの「金麦」(きんむぎ)のパッケージである。
アルミ缶のデザインが美しいと思う。
メタリックカラーの藍色で、手に取るとたしかな質感と量感を感じるいい色遣いである。
がしかし、それはいまだに名前がつけられていないあってはならない存在なのである。
読売新聞には「ビール風味のアルコール飲料」と書いてあったが、
目のご不自由な人みたいなまわりもったいい方しかできない商品なのである。
庵主は身も蓋もないから、それを貧乏人向けの「代用ビール」だと言い切ってしまうが、
この言い方もそれらの飲料がビール味指向から独自の道をみいだしつつある現在では
ビールという言葉にこだわることが実情に合わなくなってきた。
一時代前なら「まがいもの」と呼ばれていたものだが、それとも違ってきたのである。
その手の商品を一括する名詞が登場するのはいつのことやら。
仮に猫ビールとでも呼んでおこうか、「吾輩は猫である。まだ名前はない」である。
そういえば、「ワンカップ大関」のパッケージも、魅力的な碧(あお)に白く浮かび上がる
「One CUP」のデザインは見るほどに美しいのであるが、やっぱりなのである。