味わいが深い
いや、逆か、味わいに立体感があるからそれをうまいと感じるのである。
普通酒や三増酒などがつまらないのはそれが浅いからである。
厚みを削ることを安いというのだろう。それを実用的といってもいいが。
そういう酒は感じるとるものがないから、すぐ終わってしまうので時間持ちが悪いのである。
呑めばすぐ酔える手っとり早いお酒だというわけである。
庵主のように少量のお酒しか呑めないとなると奥がある酒でないとダメなのである。
そこに何かを感じるものがあるお酒でないと間がもたないということなのである。
お酒と絵画が似ているのは、質の異なるものが見た目はよく似ているということである。
気にしなければ、どれもお酒、どれも絵に見えるのである。
しかし、お酒の優劣(うまいかまずいか)、絵画の秀劣(芸術か目休めか)が判ると、
お酒は一段と楽しく、絵を見ることがいっそう面白くなるのである。
絵の深みの違いについては、こちらを見ればそれを感得することができる。
それと同じものが日本酒の味わいにはあるということである。
いいお酒というのは味が深いのである、だから庵主の想像力を刺激してくれるのである。
人は物の違いが見えてくるようになるとうれしくてしようがないのである。