うまそうに見えてうまくないもの
はちみつ、干しぶどう、梅酒、それに加えて黒砂糖。
いや、それらは本当はうまいのである。
なのに、庵主はそれ以上にうまいにちがいないと期待を膨らませてしまうのである。
あるいは、食べ方が間違っているのかもしれない。
つい、多めに口に入れてしまうからである。
本当は、それらはほんのちょっとだけ口にしてその甘さを味わうものなのだろう。
うまいかもしれなと思った時にやめておけばいいのである、過ぎたるは尚及ばざるが如し。
桜酵母で造ったビールとあると、つい夢が膨らんでしまうのである。
飲んでみるとたいしてうまくはないのである。
桜という言葉が、呑み手の想像と期待を必要以上に刺激してしまうからである。
味わいが呑み手の想像を越えていないとうまいと感じないということである。
花酵母の日本酒というのがある。
一様にまずいのは、これも花という言葉に夢を抱いてしまうからである。
伝統的に磨き上げられた手法で造られた奇をてらわないお酒のうまさに得心するのである。
造り手も何かやらないとつまらないだろうから、花酵母もそれはそれでいいのであるが。