ですよ……』(典拠)。
お酒でいえば、葡萄の品種は同じシャルドネとした場合に、税込みで1本700円のワインと
税別7000円のワインはと比べたら高い方は10倍うまいか、ということである。
『価格コムというホームページを見たら、「3万と100万のオーディオで機械を隠して聴き
比べさせるテストをしたら差が無かった」という投稿に対し、「厳密な二重盲検じゃないから
無効」とか「テストの緊張感」とか、今まで金をドブに捨ててきたオーディオ・オタクが必死
に反論していて、涙が出てきた。』(同)。
『テストを受けた方はオーディオ好きで、メーカーやオーディオの特徴と言われるものは熟知
されています。また、どちらから再生されているかを知って聞くと、確かにそのように聞こえ
ます。その上で、「機械を隠すと判別が難しくなる」というのがテストの面白い所でした。』
(同)。お酒の味もそれに似ているところがあるという事である。
流石に、700円のシャルドネと7000円のシャルドネでは、あきらかに後者の方が味わいが
豊かだったということは先に書いたことがある。10倍うまいかとなるとそれはちょっと。
庵主も、呑む前にそのラベルを見ていたら、それが純米酒かアル添酒なのか自信をもって判断
できるが、そうでないときには、まず当たらないということは自信をもって言えるのである。
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オーディオもそうなのかもしれないが、お酒も、それまでに経験した知識で味を楽しんでいる
ということである。
そういう経験のない人が、突然数十万円のワインを飲んだり、磨き23%の大吟醸を呑んでも
その価値が判断できないのである。初めての人には、前者は判断不能、後者は判別不能だろう。
お酒の楽しみは、客観的にその酒質の良し悪しとか、うまいまずいを見るという事にもあるが、
主観的に楽しめる方がずっておいしく呑めるのである。
つまり、過去の記憶と今を照らし合わせて味わうという事の方がずっと楽しいのである。
客観的な味わい方は専門家に撒かせておけばいいのである。
呑み手はそのお酒を呑んだ時に味わえる感興を楽しめばいいのである。
客観的にいえば、今呑んだら、さほどうまいとは思えないお酒であっても、その味わいが、
かつて初めて吟醸酒を呑んで感動した時の味の記憶に繋がると、主観的には懐かしいうまさ
なのである。
「うまい」というのは、呑んだ時の満足感だから、その満足感を醸成出来ることが呑み手の
矜持なのである。そのお酒のうまさを演出できるかどうかということである。
演出というのはヤラセという意味ではなく、そのお酒のいいところを引き出す事である。
客観的に言ったら、普通酒は吟醸酒に敵わないからどれも不味い酒という事になってしまう。
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実は、標題に偽りあり、なのである。
日本酒という意味で「お酒」とは書いたものの、100万円のお酒というのを庵主は聞いた
ことがないのだ。
洋酒ならある。サントリーが100万円のウイスキーを売り出したことがある。
それが、あっと言う間に完売になってしまったという。
日本酒でも100万円の値段をつけたお酒があったことを思い出した。
ただし、斗瓶(18L瓶。すなわち一升瓶で十本相当)で100万円である。
おいしかったらしい。庵主は飲み損ねてしまったけれど。
升新〈ますしん〉酒店の店頭に貼ってあったポスターを見て、そういうお酒を呑む機会がある
ということを知った時はすでに参加申し込みが終わっていた時だったのである。
故に、100万円の日本酒がうまいのかどうかは、知らないのである。
本日の標題は、お酒に関しては嘘は書かないという本ブログにおける唯一の嘘なのである。
斗瓶換算なら625万円(税別)という日本酒はある。
「郷乃誉〈さとのほまれ〉」にそのお酒がある。
『「花薫光」 純米大吟醸 原酒 1993年無濾過生
720ML 262,500円(消費税込み)[注:税率5%]』(典拠)である。